す も も の 缶 詰

ツブヤキニッキ

朝日新聞より

バリー・ユアグローの『ケータイ・ストーリーズ』は、1ページか2ページで終わってしまう話がずらりと並んだ短編集だ。


不条理な肌触りのする話、思わず腹黒く笑ってしまう話、さびしい美しさに満ちた話。フツウに暮らしていたはずなのに、気づくとどこかがちょっとズレている。そんな感覚が軽妙にすくいあげられていて、ニヤニヤしながら、小説を読む楽しみを存分に味わった。


特に好きなのは、「日曜の朝」という話だ。なぜこの話が好きなのか、その理由をだれかに伝えるためだけに、自分で新たに短編をひとつひねりだしたいぐらいである。


パッと開いたページから気楽に読み始められ、なおかつ、どの物語も読むものの想像を喚起する力にあふれた、小粋で素敵な本だ。─三浦しをん(作家)