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不足すれば肥満の危険

仕事が忙しくて睡眠が短くなると、お菓子やラーメンに手が伸び、太ってしまう─単に意志が弱いからだけではなく、体の要求に従った自然の理であるとする研究が昨秋、米国で続々と発表された。


ラスベガスで開かれた北米肥満学会では、コロンビア大のチームが32〜59歳の1万8千人を対象にした健康栄養調査の結果を発表。一晩に4時間以下しか眠らない人は、7〜9時間の人に比べ肥満になる危険性が73%も高いとわかった。


「犯人」は、食欲を調節するホルモンだった。


ウィスコンシン大やスタンフォード大が、ウィスコンシン州の約千人を対象に10年以上続けている調査によると、平均睡眠が約5時間の人は空腹感を増す「グレリン」というホルモンの分泌量が8時間の人より約15%多かった。食欲を抑える「レプチン」の分泌量は約15%少なかった。


「空腹のまま眠り続ければ餓死するから、野生動物は自然に目が覚める。血中の糖濃度と摂食ホルモン、睡眠や覚醒をつかさどる生理活性物質が互いに制御しあっていることがわかります。おなかがすいていると寝付けなかったり、睡眠時間が短いと太りやすかったりするのもそのためです」と筑波大基礎医学系の桜井武・助教授は説明する。


睡眠と摂食を結びつける鍵が、桜井さんが、柳沢正史テキサス大教授らと見つけた「オレキシン」という生理活性ペプチドらしい。オレキシン神経系のスイッチが「オン」になると、信号が覚醒関連領域といわれる部分に伝わって、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が分泌されて、人は覚醒状態になる。「オフ」になれば、睡眠状態に入る。


オレキシンをつくる神経の働きが、レプチンなどの摂食ホルモンの濃度に左右されることがわかってきました」と桜井さん。眠りと食は表裏一体だった。