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技術の習得も早める

睡眠と、脳や体の他の働きとの関係についても、手がかりが見つかり始めた。


脳内の神経伝達物質などについて調べている本多和樹・東京医科歯科大助教授は、眠くなったときに脳内で増える物質の中に、毒性の強い活性酸素などのフリーラジカルを除去する働きを持つ物質があることを発見した。


「最も酸素消費量の多い脳では、フリーラジカルもできやすい。睡眠中にそれを除去、脳細胞の傷を修復しているのかもしれない」


ネズミを無理やり起こしておくと、皮膚がただれ、免疫機能も低下して数週間で死んでしまう。


「睡眠不足で肌が荒れるのは、睡眠中に出る成長ホルモンが不足するから。免疫機能が低下するのは、免疫を担うサイトカンが睡眠制御にも関係しているから。寝ることが大きな機能を担っているのです」と本多さんは強調する。


もちろん、視覚や聴覚、運動に関する記憶や学習の強化にも重要だ。


国立精神・神経センター精神保健研究所の栗山健一研究員は米ハーバード大に留学中、学生ボランティア約60人に、数字を書いた鍵盤を指で打たせる実験に取り組んだ。両手の指8本を使って8種の数字を打つ、複雑な課題に取り組んだグループは、睡眠により習熟度が30%近く高まった。だが、片手の4本で4種の数字を打つグループは習熟度の上昇は約18%だった。


「複雑な課題ほど睡眠の効果は高い。睡眠中に神経間の接続が拡大したりスムーズになったりするのだろう」と栗山さんは考える。


鳥類や哺乳類は、脳波の動きが違う2種類の睡眠を持つ。脳波が覚醒時のように活発に動く「レム睡眠」と、ゆっくり動く「ノンレム睡眠」だ。昆虫や両生類にはこの区別がない。哺乳類でも、人のように数時間も連続して眠る動物は珍しく、ネズミは1回約20分だ。


ハエの睡眠の研究をしている粂和彦・熊本大助教授はいう。「進化の過程で大脳皮質が発達するにつれ、体を休めてエネルギーを節約することだけが、睡眠の役割ではなくなってきた。人では、起きている時とは違う働きを大脳が受け持つようになり、そのために連続睡眠が延びたのではないでしょうか」


(以上、朝日新聞より)