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ツブヤキニッキ

朝日新聞より

02年にイスラム教過激派テロリストに殺害された『ウォールストリート・ジャーナル』紙記者ダニエル・パール氏の妻がつづったメモアール。パール記者はある容疑者の背後関係を取材していたときにカラチで誘拐され、鋭利なナイフで首を切り落とされた上、9つに文壇されるという残虐な処刑を受けた。その映像はアラブ系テレビを通じて放映された。


フランス人ジャーナリストの著者はそのとき妊娠しており、過酷な運命を乗り越えてアダム君を出産した。夫とそっくりの表情で自分を見つめるアダム君に、「平和のために戦う人がこれからもっと増えるはず」との夫の言葉を思い出す。


人間がここまで残酷になれることに衝撃を受けたが、世界中から母子に届いた無数の手紙には優しさがあふれていて、救われる。「人間の本質は善との信念を取り戻せた」と述べる著者に共感した。─多賀幹子(フリージャーナリスト)