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ツブヤキニッキ

恐竜が喚起する失われた世界、生命進化の神秘

太古のロマンを象徴する恐竜への関心が高まっている。特に巨大肉食恐竜ティラノサウルス・レックス(暴君トカゲ)が大人気だ。通称T・レックス。命名から100年目の今年、90年に北米で発見された6700万年前の化石スーの全身複製骨格が「恐竜博2005」で日本にも初お目見えした。


全長12.8メートル。体重約6トン。スーの発掘で恐竜研究は前進した。初めてCTスキャン(コンピューター断層撮影装置)を用い、立体画像を製作。脳は1リットル入り牛乳パックほど、享年は28歳だったとか。そんな最新データをふまえ、科学絵本『ティラノサウルス』*1では生存時の姿を復元し、『立体モデル大図鑑 恐竜のからだ』*2では前進の仕組みを解剖して見せた。


T・レックスが生きた時代と古生物全般を知るには『恐竜博物図鑑』*3が便利。「白亜紀(1億4400万年〜6500万年前)の気候は・・・温暖で多湿」と生息環境もわかる。スーについても詳報した「ナショナルジオグラフィック」誌の03年までの主要記事をもとにした『恐竜の世界』*4(日経ナショナルジオグラフィック社)は恐竜学の最前線をとらえ、刺激的だ。


日本にもティラノサウルス類がいた。『日本恐竜探検隊』*5真鍋真・小林快次編著、岩波ジュニア新書)はモンゴル、中国も視野に入れ、地道な化石発掘の重要性を改めて示唆する。


とはいえ恐竜は謎だらけ。恐竜温血説や鳥類の恐竜起源説が70年代からあるが、今日最大の関心は後者。本当に「恐竜は絶滅せずに鳥へと進化した」のか。スーにも証拠があるという。答えは「恐竜博」のカタログに詳しい。


なぜ恐竜に惹かれるのか。『Sue スー』*6を手に取れば共感できよう。作家のコナン・ドイルも漫画家の手塚治虫もそうだった。誰も見たことがない「失われた世界(ロストワールド)」には、想像力をかきたてる何かが確かにある。─(依田彰)