§…読書中…§
原書、単行本に加え、携帯版での再読。
J.K.ローリングは、物語がだんだん暗くなると宣言していたが、第六巻はまさに暗い。しかし、影があれば光が浮き立つ。「選ばれし者」の予言を受けて立つハリーを、二人の親友ががっちり支え、ジニーがその輪に加わる。人生が変わるほどの災難にあったビルを、フラーがしっかり受け止める。そしてトンクスの新しい幸せ。単純な「愛」がいかに強いものであるかを、ダンブルドア7はハリーに理解させようとする。現実の世界の苦しみや悲しみを反映した物語には奥行きがあり、読み手を共感させる。
大人になったハリーたち三人の感情は複雑になり、ジニーを加えた四人の関係は、第一巻とはまったく違うものになった。大人の感情をそのまま投入して読んでも違和感がない。ダンブルドアもハリーを完全に大人として扱い、個人教授を通して、自分の持てるものをすべてハリーに注ぎ込もうとしている。
ハリーはいよいよ旅立つ時を迎えた。シリウスを失ったのは、独り立ちの序章だった。一歳で両親を失い、十五歳で親とも慕うシリウスを失い、そして十六歳のいま、ハリーはまたかけがえのない人を失った。
──訳者あとがき「最終章のラブレター」より