す も も の 缶 詰

ツブヤキニッキ

『血に問えば』/イアン・ランキン

血に問えば ハヤカワ・ノヴェルズイアン・ランキン (著), Ian Rankin (原著), 延原 泰子 (翻訳)

出版社/著者からの内容紹介
高校に乱入した男が銃を乱射し少年二人を殺害した。リーバス警部は殺人容疑をかけられて禁慎の身にもかかわらず捜査に乗り出す。媚びず挫けず一匹狼を貫く、卑しき町に生きる偽悪的刑事の美学。

朝日新聞書評
スコットランドの都市エジンバラの郊外にある私立学校で、陸軍特殊空挺部隊SAS)の元隊員が銃を乱射して現場で自殺、生徒二人が死に、一人が重傷を負うという事件が起きた。犯人を襲った狂気の原因は何なのか。おなじみリーバス警部が捜査にあたる。


大阪府池田市の小学校で起きた事件が記憶に新しく、ランキンが描いた犯罪は、絵空事に留まらないリアリティーを持っている。ゴス(ゴシック)・ファッションを身にまとい、自室での生活映像をネットに流す少女や、家庭を顧みない議員の父親を軽蔑する少年が登場したりして、現代日本の風景として示されたとしても違和感がない。この共時性には、複雑な思いに駆られる。


最終的にはきわめて古典的な手がかりによって意外な解決を迎えるが、同時に、解き明かされない心の謎が残される。シンプルなプロットを錯綜したストーリーと現代的なテーマでまとめた、時代に誠実な秀作だ。─横井司(ミステリー評論家)