す も も の 缶 詰

ツブヤキニッキ

翻訳者 今井由美子氏のメッセージ

何よりもまず、本書の復刊リクエストに票を投じてくださった皆様に、心よりお礼を申し上げます。「リヴァーの突然の死から、11度目のハロウィーン・ナイトがもうすぐ訪れようとしています。この間、彼の弟ホワキン、親しかったキアヌ・リーヴス、そしてポスト・リヴァーと言われていたレオナルド・ディカプリオの活躍を見るにつけ、リヴァーが生きていたらなあ……と、何とも言えない虚しさ、悔しさを感じてきました。おそらく皆様と同じように。

1995年の早春、私はまだ見本版だった、この本の原書をキネマ旬報社のオフィスで受け取りました。『スタンド・バイ・ミー』を見て、その澄んだ瞳と、若いのに、なぜかしら威厳を感じさせる佇まいに魅了されていた私は、どんな内容なのだろうか、とひどく興奮していました。自宅に持ち帰り、さっそく読み始めてからは、驚きの連続でした。それまでに発売されていたリヴァー関連本といえば、きれいにまとめられた写真集やバイオばかりでしたので、この本の内容がファンの方たちに与えるショックを考えると、ひどくドキドキしたものです。

60人を越える友人・知人へのインタビューを中心に構成されたこのバイオは、濃厚で立体的です。初めて明かされた事実は数知れません。いいところも、そして「うーん、ちょっとなぁ」と思ってしまうようなところも、すべて書かれています。皆様の目の前に、生き生きとした素顔のリヴァーが現れることでしょう。

この本のページをめくりながら、まるで1本の映画のようなリヴァー・フェニックスのドラマチックな人生を、じっくりと味わっていただきたいと思います。そして、彼の感じていた喜び、苦しみ、夢……、没後10年以上が経った今でも、なお心を揺さぶられるリヴァーの生〈せい〉のメッセージに何かを感じ取っていただければ、翻訳者として、これほどの喜びはありません。

─今井由美子