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ハリー・ポッターをマグルに届ける電子の魔法

2005/07/19 10:34 ─ ITmedia News

ハリー・ポッター最新作を人々に届ける魔法使いは、IBMAmazonだ。電子商取引技術という魔法で莫大な予約注文をさばく手助けをしている。


ホグワーツ魔法学校を卒業しなくても、魔法使いになれる。現代の電子商取引の「魔法」が、ハリー・ポッター最新作をあらゆる世代のマグル(魔法使いでない人)に届ける手助けをしてくれる。


魔法は物語の中のものと考えられることがほとんどだ。しかし、出版社と書店にとって、ハリー・ポッター最新作「Harry Potter and the Half-Blood Prince」そのものが需要、予約、それらをまとめるのに使われた電子商取引技術という点で魔法のようなものだった。


7月15日の時点で、Amazon.comHarry Potter Meterは、最新作が90万部以上、同サイトを通じて予約されたと報告していた。同社プレスリリースによると、その週の初めから、全世界で140万部以上の注文があったという。


これにより、この作品はAmazonでこれまで最も売れた新製品となっている。これまでの最高記録は「Half-Blood Prince」の前作「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」で、2003年6月21日の発売までに130万件を超える予約があった。


108万部の出荷を発表していた米国の出版元Scholasticの予想よりも、ずっと目覚ましい数字だ。


IBMはこの魔法の一部を担っている。同社はWebSphereアプリケーションを通じて、Scholasticが最新作の発売に向けて高まるニーズに応える手助けをしている。


「Scholasticが1年から1年半前ぐらいに問い合わせをしてきて、IBMのソフトで新サイトを構築し、既存ソフトから移行する決定をした」とIBM電子商取引・マルチチャネル小売戦略プランニングマネジャー、クレイグ・スティーブンソン氏。


ハリー・ポッターへの高い需要と、オンラインで書籍を予約するコンシューマーの増加を受け、小売業者はオンライン要件を見直している。


ティーブンソン氏は、これまでScholasticのような書籍流通業者は、Webサイトを構築するだけだったと説明する。「彼らはこれまで、Webサイトにハリー・ポッターの予約注文がたくさん来るとの前提には立っていなかった。ハリー・ポッターのような作品により、Scholasticなどの小売業者は『堅牢で拡張性のあるサイトを構築しなければ』と言わざるを得なくなった」


多数の予約注文が同時に行われるため、小売業者は迅速に拡張できるよう必要なインフラを持たなくてはならないと同氏。拡張性を念頭に、WebSphereファミリーのCommerceとApplication Serverを組み合わせたという。


このほかスティーブンソン氏は現代の電子商取引の課題として、顧客が欲しいものをすぐに探し当てて購入できるようにすることを挙げた。検索エンジン最適化(SEO)を通じて自社が検索にひっかかるようにすることも、課題の1つとして挙げられた。IBMは向こう数週間以内に登場するWebSphere Commerceの次のバージョンで、ユーザーのSEOを支援する計画だ。


ScholasticはIBM WebSphereの顧客だが、最大のオンライン書店Amazonはそうではない。Amazonは独自のシステムを利用しており、最近、このシステムの顧客に文脈的な情報を提示する方法に関して特許を取得した。


米国特許6,917,922号「電子カタログ閲覧中に関連する注文についての文脈的な情報を提示する方法」は、Amazon創設者のジェフ・ベゾス氏が7月12日に取得した。


「Webサイトあるいはほかのインタラクティブシステムとして実装できるオンラインストアシステムが、顧客が電子製品カタログを閲覧中に、これまでの顧客に注文に関連した文脈に依存する情報を提示する」と米特許商標局(USPTO)の概要には記されている。「ある実施例では、顧客が特定商品の詳細ページにアクセスした時に、詳細ページに顧客の注文に関連するステータス情報などの情報を補足する」


ティーブンソン氏はAmazonの特許について心配していない。


「競争の点で見ると、Amazonは有益だが、必ずしもほかの小売業者には有益とは限らないやり方をしている」と同氏は語り、WebSphere Commerceにおいて、IBMは同社の手法に適用される特許を有していると付け加えた。


同氏の見解では、WebSphereの顧客はAmazonのような文脈依存のシステムを望んでいない、あるいは必要としていない。


Amazonは、類似のグループに基づいて書籍を推薦する文脈依存型のエンジンを持っている」とスティーブンソン氏。この種のエンジンは、同様の検索を行ったユーザーが購入したものに基づいて商品を推薦する仕組みになっている。


「われわれはそうした技術を気にしてはいない。当社顧客のほとんどはこの種の技術を使っていない。オンライン小売分野の顧客はほとんど、製品の供給やプロモーションなどの特定のビジネスロールに基づいて、クロスセル(抱き合わせ販売)やアップセル(上位製品の販売)を提供したがっている」