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アインシュタインと世界物理年

今から100年前の1905年は、後に物理学の「奇跡の年」と呼ばれることになった。アインシュタインが「光電効果」「ブラウン運動」「相対性理論」について革命的な論文を立て続けに発表したのだ。


特に「特殊相対性理論」は運動する物体では長さも質量も時間も変わるという常識はずれな理論だったが、後の「一般相対性理論」とともに現代科学の基礎となる。例えば全地球測位システムGPS)を利用したカーナビも、これがなければ誤差だらけ。


というわけで、彼の業績を記念して国際純正応用物理学連合(IUPAP)と国連はそれぞれ、今年を「世界物理年」(国際物理年)と定めた。出版の世界もにぎわっている。


暗記が苦手で、大学入試にいったん失敗、就職の時も困って友人のコネでスイス・ベルンの特許局の臨時職にありつく、といった決して順風満帆ではない青春時代、そして物理学を塗り替えた彼の業績の紹介としては、『アインシュタイン16歳の夢』や、広瀬立成『相対性理論の一世紀』(新潮社)など。後者は議論の多い核兵器戦争、そして平和運動へのかかわりなどとともに、相対論とその後の物理学の進展を読ませる。日本に与えた影響をまとめた労作、金子務『アインシュタイン・ショック』(1・2、岩波現代文庫)も再刊された。


一般相対性理論の後に彼が取り組んだ、重力と電磁気力をまとめて説明しようという「統一場理論」はうまくいかなかった。『100歳になった相対性理論』は、宇宙論に的を当てつつ彼が残したこの“宿題”にも触れる。菅野礼司・市瀬和義『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 相対性理論』(PHP研究所)は相対論のエッセンスを完結に解説。科学雑誌などの別冊やムックも動きが活発だ。