す も も の 缶 詰

ツブヤキニッキ

忘れられた巨人/カズオ・イシグロ

イシグロの10年ぶりの新作はファンタジーということで期待。アーサー王、円卓の騎士ガウェイン、魔術師マーリン、竜とくれば、嫌でもわくわく。息子が住むという、あるいは老夫婦が渡ろうとする島はアヴァロンか?しかしそれらは外側だけであり、ファンタジーというのも形だけ。人間は怒りや悲しみや恨みを忘れたほうが世の中が平和になる。特に夫婦は忘却と許しが必要。そういう事が書かれていたのだろうか?どういう結末なのか、最後の部分の意味が分からない。本質的にはラブストーリーであるとされながら、私には最後の部分でどうしてもラブストーリーには思えない。また翻訳の土屋さんは好きだが、これに関しては今いち。老夫婦の会話がしっくり来ない。ファンタジー関連の事柄は知識や慣れも必要だから、得意分野ではなかったかも?高い評価を得ている本作だが、ファンタジーとして期待した私には退屈だった。