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ツブヤキニッキ

一番大切なこと

【空がきれいだ、空気がきれいだ、景色がきれいだというのは当たり前の事。一番大切なのは、そういう当たり前のことだ。】
 
これは昨日の『世界一受けたい授業』で、冒険家・関野吉春さんが語った言葉です。まさに私が最近感じていたことそのものなので、引用させていただきました。
 
引っ越して分かりましたが、東京の空は上空が晴れて青空になっても、ビルの数十メートル上までは濁った灰色です。街には悪臭が漂い、景色はコンクリートばかり。今更言うまでもないですが、当たり前ではありません。きれいな空気を吸えるというような、大切な当たり前のことを人間(自分も含めて)がどんどん壊している。
 
ちなみに、今年の新宿御苑の紅葉は色が濁っています。色づき始めたなと思ううち、イチョウやもみじなども鮮やかな黄色や赤には変わらず、どんどん茶色くなっています。紅葉したというより、単に枯れていくだけのような感じ。
 
夏の日照時間が足りなかったせいもあるかもしれませんが、今年ばかりではありません。数年前からきれいな赤になる木が少なくなり、今年はたぶんほとんど赤茶色になると思います。新宿御苑だけではなく、神宮外苑や代々木公園なども同様で、具体的に何を心配すればいいのか分からないまま、当たり前の景色でないことに危機感を覚えています。
 
ところで、私は関野さんのグレート・ジャーニーが大好きで、どうしても会ってみたいと願って、実際にお会いしたことがあります。「冒険家」というイメージからはほど遠く、穏やかで柔和な感じの方でしたが、握手した手だけはゴツゴツと固い「冒険家」の手でした。
 
サインをしていただいた時に、数えきれないほどのサインをしているだろうにも関わらず、きっちりと「関野吉春」と楷書で書かれたのが印象的でした。自分というものをきちんと認識して、良い意味で自分に自信を持っている方なのだなと思いました。
 
冒険には不屈の前向きな精神も必要ですが、何年もかかって準備をして来たのに天候などのやむを得ない事情で中止しなければならない事態になった場合、「やめる決断」をするのも勇気のいることだと思います。
 
人間は自然には勝てないのですから、自分の力を過信せず、自然に逆らわないことも大事なことなのだと教わった気がします。前に進むだけではない、時には退くことも必要です。しかしそれは、けして「後退」ではないと思います。それは冒険という特別な場合だけでなく、日々の暮らしの中で、常に考えるべきことなのではないかと。