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【お薦め本】娘たちのための狩りと釣りの手引き

娘たちのための狩りと釣りの手引き 娘たちのための狩りと釣りの手引き(1999/10/20)
メリッサ バンク
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5つの作品が収められた短編集。

表題作は、BOOK PLUSの『ゾエトロープ[pop]』に入っており、それを読んで気に入って買った。しかしその表題作が恋愛物だったので、これもまた、昨今流行のブリジット・ジョーンズばりの話かと思っていたら、とんでもない間違いだった。この誤解は、ジェーン・グリーンの『ジェマイマ・J』のように期待を裏切った形ではなく、驚きと感動を味わうというものに変わった。短編集とはいうものの、主人公のジェーンはどの話にも登場し(隣の女の子といったようなちょっとした脇役というのもあるが)、全く違う話が5つというわけでもない。

私が特に感動したのは、父親の死と夫婦のあり方といった、自分でも経験のある事柄を扱った部分。その部分で、オースターの『孤独の発明』以来、久々にたくさん涙を流してしまった。自分の体験を思い出したのもあるだろうが、同じ体験が書いてあっても、全然感動しないものもあるし、そういう意味では、この作品は、自分の心を揺さぶったと言ってもいいだろうと思う。ひとつひとつのエピソードが胸にしみる。

孤独の発明 (新潮文庫) 孤独の発明 (新潮文庫)(1996/03/28)
ポール オースター
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そして、表題作の恋愛物にしても、主人公はブリジットやジェマイマと同じように、自己啓発本を鵜呑みにするのだが、ブリジットやジェマイマと違うのは、そんな本は全く必要なかったというところだ。むしろ、そういった自己啓発本が邪魔して、愛を逃しそうになる。そして自分に正直になった時、やっと報われるというもの。自己啓発本の悪口を書いているわけではないが、そんなところが他の話とは違うということを言いたい。

主人公ジェーンは、うわついてもいないし、自分をしっかり見つめている。男に惑わされず、自分の道をしっかり歩いている。ごまかしてもいない。そんなちょっと醒めたようなところが魅力的だ。ブリジット・ジョーンズの一生懸命さもかわいいが、ジェーンのクールさもカッコいい!本自体、カバーを外した装丁もいいし、お薦めの1冊

目 次
初心者上級クラス
フローティング・ハウス
わたしの恋人
できるだけ優しい光を
郊外に住む女の子にとって想像し得る最悪の事態
"あなた"の話
娘たちのための狩りと釣りの手引き